February 17, 2020

2000年以降の日本におけるDRPGの系譜とその解説

筆者は2000年前後より、積極的に3DダンジョンRPG(DRPG)の
情報を追いかけるようになったのですが、
どこかで一旦、これらのゲームの系譜をまとめておきたいな…と、
最近思った次第です。

以前『ゲームラボ』誌のウィザードリィ特集や、
同人誌『ウィザードリィの深淵2』向けに
ウィザードリィに特化した系統図は作成したのですが、
今回はそれをベースに、2000年代以降の
日本で発売された3DダンジョンRPGについての系統図を作成してみました。

注釈:
2000年代前半までは3DダンジョンRPGというジャンルについて、
どうしても『ウィザードリィ』の影響が強かった事もあり、
以下『ウィザードリィ』が中心となっている記述が多いことに留意ください。
また、筆者は同人ゲームやアダルトゲームに明るくない事もあり、
これらのゲームについては取り扱っておりません。
予めご了承ください。

2000年代以降のJDRPG系譜図

上記の画像が今回の要旨をまとめた系譜図となります。
非常にサイズが大きいのでご注意ください。

English version of Japanese DRPG genealogy(2000-2019) is Here.

2000年頃にウィザードリィの権利元であるSir-tech社は
日本の多くのゲームメーカーに
「ウィザードリィのライセンスを使ってゲームを作らないか?」
と持ち掛けておりまして、これに多くのメーカーが賛同しました。

FC版をはじめ、数多くのウィザードリィを手掛けてきたアスキーからは、
事実上の「ウィザードリィ外伝5」となる『ウィザードリィディンギル』(2001)、
そしてFC版を3作まとめてのSFCへのカップリング移植となる
『ストーリーオブリルガミン』(2000・発売はメディアファクトリー)、
そしてそれをベースに多数のアレンジを加え、
それぞれ個別に移植を行ったのがGBC版ウィザードリィ1/2/3(2001)になります。

また2005・2006年に新たなウィザードリィ外伝として登場したのが、
『戦闘の監獄』(2005)と『五つの試練』(2006)。
出た当初こそPC専売という事もありかなりマイナーではありましたが、
後者にはゲームエディターが付いていて、
新たなウィザードリィを作ってオンラインで共有可能と、
ある意味究極のウィザードリィとなっています。

アスキー以外のメーカーからも、多くのウィザードリィが出ました。
『無人島物語』などで知られるKSSからは『ウィザードリィクロニクル』(2001)。
メディアリンクからは金と経験値が入れ替わってる『ウィザードリィサマナー』(2001)。
バンダイのワンダースワン向けにはスティング開発の1作目の移植(2001)。
そしてアトラスからは『BUSIN: Wizardry Alternative』(2001)。
ウィザードリィ以外にも、この流れに便乗してか
80年代JRPGの先駆作品『ザ・ブラックオニキス』のGBC移植(2001)が出たり、
また、「ゲームブックのようなダンジョンRPG」という、
後の『世界樹の迷宮』を先取りしていたかのようなコンセプトを掲げた
『ソリッドリンク』(2000)というゲームもPSで出てました。

ウィザードリィのライセンス作品を手掛けていたメーカーの中でも、
特に熱心に作品を作っていたのがスターフィッシュ(元ホット・ビィ)で、
プラットフォームごとに全く異なる世界観やゲームシステムを持ち込んだ
『ウィザードリィエンパイア』(1999〜2003)シリーズ、
そしてDS向けにタッチパネル操作を組み込んだ
『ウィザードリィアスタリスク』などをリリース。

その後PS版『ウィザードリィエンパイア2』の開発を行った
マイケルソフトが新たにライセンス契約して産みだしたのが、
様々な物議を醸した「学園ウィザードリィ」こと
『ウィザードリィエクス』(2005〜2006)シリーズです。

ただ、このシリーズの開発においてもライセンス契約上の問題や、
製作スタッフの内部分裂など紆余曲折があったようで、
主な開発スタッフが退社してエクスぺリエンス社を設立。
『ウィザードリィエクス』シリーズの精神的後継作となる
『GenerationXTH』(2008)シリーズや
そのリメイクとなる『東京新世録』(2013)シリーズ、
PSVitaの3DダンジョンRPGの代表作であり、
「DRPG」というジャンル表記を初めて提唱した
『デモンゲイズ』(2013)シリーズなど、
数多くの作品を生み出すこととなりました。

一方、分裂したマイケルソフトの後継会社とみられるのがゼロディブで、
デビュー作『剣と魔法と学園モノ。』(2008)は
『ウィザードリィエクス2』のデッドコピーとしか言いようがない代物でしたが、
これをベースに後述するウィザードリィルネサンスに属する2作品
『囚われし魂の迷宮』(2009)『囚われし亡霊の街』(2011)や、
際どいエロ要素を組み込んだ『限界凸記モエロクロニクル』(2014)、
電撃文庫とタッグを組んだダークな作風の『神獄塔メアリスケルター』(2016)、
『メタルマックス』シリーズの開発者が参加し、
同作の作風を色濃く取り込んだ『メイQノ地下ニ死ス』(2015)など、
個性的な作品を多数産みだしています。

また『ウィザードリィエンパイア』シリーズのスターフィッシュも、
実質的なその後継となる『エルミナージュ』(2008)を開発。
「星魚の奇跡」と呼ばれるほど完成度が高く、
好評を得て独自の世界観でこれもまたシリーズ化しました。


それ以上に「3DダンジョンRPG」というジャンルの存在感を
大きく示すことになったのが、
アトラスより発売の『世界樹の迷宮』(2007)。
当時の新ハードであるNintendoDSの2画面のうち下画面を
「マップを描く」事に特化する事によるマッピング作業の面白さ。
ゲームブックを意識した、特徴的なテキスト回し。
死と隣り合わせの絶妙なゲームバランス。
これらの要素を『ウィザードリィ』をはじめとする
レトロなRPGファンには懐かしく、
新世代のゲームファンには新しい楽しみ方として
提供する事で世代を超えた人気作品となり、
「3DダンジョンRPG」という枠を超えた、
DS系ハードを代表するRPGの1つとなりました。
本作の登場した2007年以降、
「ウィザードリィ」のタイトルを冠さない、
オリジナルの3DダンジョンRPGが爆発的に増えていくことになります。

先述したスターフィッシュ・エクスペリエンス・ゼロディブ作品以外にも、
古典的DRPGをそのままDS上に再現したサクセス『幻夢ノ塔ト剣ノ掟』(2008)、
人気絵師を多数集めた、
フリューのゲームデビュー作『アンチェインブレイズ レクス』(2010)、
女の子を3DSの立体視で眺めながら迷宮の奥を目指していく
トライエース『ラビリンスの彼方』(2011)、
人気美少女ゲームをベースにしながらも、容赦ない難易度の
ダンジョンRPGに仕上げた『ToHeart2 ダンジョントラベラーズ』(2011)、
やっぱり3DSでの美少女表現にこだわりつつ、
謎解き主体でダンジョンを攻略していく『星霜のアマゾネス』(2013)、
バンダイからは当時人気を博したアニメのゲーム化作品となる
『魔法少女まどか☆マギカ ポータブル』(2012)、
ガンダム・ウルトラマン・仮面ライダーの競演RPG
『ロストヒーローズ』(2012)など、
ポスト『世界樹の迷宮』を目指した様々な3DダンジョンRPGが
2010年代前半には現れました。

また、この時期に『ウィザードリィ』の版権も日本企業に移行。
ウィザードリィの復権を掲げた
「ウィザードリィルネサンス」プロジェクトが立ち上がり、
DSのタッチパネルを活かした謎解きを搭載した『生命の楔』(2009)、
先述したゼロディブによる『囚われし魂の迷宮』(2009)、
難攻不落のオンラインアクションRPG『ウィザードリィオンライン』(2011)、
バンダイナムコによる典型的ソーシャルゲーム『戦乱の魔塔』(2013)、
ローグライクゲームとの融合を図った『ウィズローグ』(2014)など、
こちらでも多種多様なウィザードリィ作品が現れたのです。

「ウィザードリィルネサンス」プロジェクトについては、
2016年のオンラインのサービス終了をもって一区切りとなり、
以降「ウィザードリィ」の名を冠するDRPGは作られていませんが、
それでもまだまだDRPGは多数作られていまして、
日本一ソフトウェアらしいやり込み要素と世界観を備えた
『ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団』(2016)、
クトゥルー神話と現代オカルトと「そんな装備で大丈夫か?」を融合した
角川ゲームス『The Lost Child』(2017)、
クローン人間による無人島サバイバルを描いた
日本発では珍しいリアルタイムDRPG『ザンキゼロ』(2018)、
キャラクター性を前面に押し出した『ウィザーズシンフォニー』(2019)など、
DRPGの多様性はますます増え続けています。
おそらく今後も、このジャンルは細く長く続いていくのではないかと。


……とまあこんな感じで2000年以降の日本発のDRPGについて
語ってみましたが、いかがだったでしょうか。
もし指摘事項等ありましたら、コメント頂ければ幸いです。

今回は2000年以降の日本作品だけの解説となりましたが、
時間があれば90年代・80年代の日本作品についてや、
海外作品についても追っていきたいと思っています。

この記事へのコメント

1. Posted by チャレンジAVGRPG   February 17, 2020 00:57
80年代の日本のDRPGだと
ブラックオニキス
ファンタジアン
リザード
ザ・スクリーマー等ですかね
ポートピア連続殺人事件も推理物なのに
ダンジョンがありましたね
2. Posted by 古典的DRPG好き   February 17, 2020 18:44
世界樹クローンだけどPQなんかはどうお思いでしょう?
人気のペルソナシリーズとのコラボ作品で売上げだけ見れば本家世界樹のどの作品よりも上。
3. Posted by ずんこ。(jzunkodj4y)   February 18, 2020 01:01
>チャレンジAVGRPG様
80年代のプレ・ドラクエ時代だけを数えてもかなりの量がありますし、
そこにドラクエ以降のゲームやエロゲーなんかも加わってくると正直まとめられる気がしません(汗)
遊ぶ環境も揃えづらいですし…w
ちなみにポートピアの地下ダンジョンがあるのはFC版と、
FC版ベースの携帯電話版だけなんだとか。

>古典的DRPG好き様
実のところ自分が紹介しなくてもみんなやってるだろう…と思って、
世界樹やペルソナQはあまり遊んでないんですよね
(世界樹1だけ完全クリア済み、ペルソナQは2の第1層を遊んだだけ)。
ペルソナ3以降の本編も遊んでないので、
自分としては評価しづらいものがあります^^;

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