October 30, 2017
ウィザードリィ:「マーフィーズゴースト」をめぐるデマ
今回は、久しぶりに「ウィザードリィ」関係の記事。
ウィザードリィ・狂王の試練場の「マーフィーズゴースト」と言えば、
地下1階のとある個所に固定出現し、
莫大なHPと異常なまでの回避力でLv1の冒険者を撲殺する…と思いきや、
攻撃力がほとんどなく、1匹あたり6人パーティで731ポイントの経験値という
地下1階としては破格の経験値を持つ上に何度でも出現するため、
少しレベルが上がった冒険者からは格好の「道場」として狩られまくる…という、
ワードナに挑む冒険者の方々なら一度はお世話になったであろうモンスターです。
そのインパクトの強さゆえか、
FC版『ウィザードリィ3 ダイアモンドの騎士』では原作で登場しないにもかかわらず、
新規追加モンスターとして、再び地下1階に固定配置。
その後の『ウィザードリィ外伝1〜3』でも序盤の経験値稼ぎモンスターとして実装され、
『ウィザードリィディンギル』では遭遇時にムービーが流れる…など、
日本製のウィザードリィにおいて定番モンスターの地位を確立しました。
このマーフィーズゴーストについては、
実はモデルが製作者の友人…という事はよく知られていますが、
それ以外にも、Web上には以下のような記述が散見されます。
(RocketNews「開発者が嫌がらせで友人の名をゲームに登場させる」より引用)
(appget「ウィザードリィ」マーフィーズゴーストは実在する!出現場所はトイレ!?ダンジョンRPGの始祖のちょっとヤバい噂に迫る!【ゲーム年代史】 より引用)
この「マーフィーズゴーストはゲームの製作者が嫌がらせで登場させた」という説。
製作者が彼に恨みを持って何度も倒されるモンスターとして登場させた…というのは、
果たして本当でしょうか?
結論から言いますと、
「作者が嫌がらせで登場させた」という事を裏付けるものは何一つありません。
実のところ、マーフィーズゴーストについて、
開発者の一人であるロバート・ウッドヘッド氏はこう答えています。
(「ウィザードリィコレクション」(1999,鈴木常信著,ローカス), P37より引用)
この通り、「製作者の友人である」という事しか答えておりません。
また、製作者の友人を敵として登場させたのはマーフィーズゴーストに限らず、
例えばシナリオ4『ワードナの逆襲』の共同制作者である
ロー・アダムスがモデルのラスボス「ホークウインド」
(氏は『ウルティマ4』や『バーズテイル』の制作に参加しており、
いずれの作品にも氏がモデルのキャラクター「ホークウインド」が登場する)、
また『リルガミンの遺産』に登場する中ボス「ポ・レ」「デルフ」も、
コーネル大学(原作者2人の出身校)内のゲームサークル
「Wizardry Advanced Research Group」に所属しシナリオの一部を担当した
Samuel Pottle氏、Robert Del Favero氏がモデルとなっています。
("Pottle"から"t"を省略して"PO'LE"、"Del Favero"の先頭4文字を取って"DELF"。
なお「デルフ」については日本のウィザードリィ解説本のいくつかにおいて、
「陶器に悪霊が宿ったもの」という解説がなされているが、
これはオランダに実在する「デルフト陶器」からの連想による後付け)
以上のように、アンドリュー氏・ロバート氏の2人が中心となって
ウィザードリィを制作していた頃は製作者の友人を敵として登場させることは
当たり前のように行われていて、そのあたりに特に悪意は見出せませんし、
何より製作者たちが嫌っている人物を、
自作ゲームのテストプレイヤーとして採用することは普通ないと思うのですが(笑)
「嫌がらせでゲームに登場させた」という可能性は、限りなく低いと思います。
「ウィザードリィは想像力のゲーム」とは昔からよく申されますが、
あらぬ方向に想像力を発揮して根も葉もない噂を広めるのは、
ゲーム自身にも制作に関わった方たちにも失礼だと思うのです。
他にも冒頭で紹介したappgetの記事には、
「ダンジョンの形状が彼らの通っていた大学の間取り」や、
「マーフィーズゴーストの出現位置が大学のトイレの場所」といった記述がありますが、
現在のコーネル大学の地図を目の皿のようにして探しても、
それっぽい箇所は全く見つからないとか、
個室の周りを多数の小部屋が囲ってるトイレなんてどんな構造なんだよ!とか、
とにかくツッコミどころ満載で、
こんなデタラメな記事で「ゲーム年代記」なんて名乗るんじゃねえ!と、
筆者は若干の怒りを持っている事を表明しておきます。
余談:
ネット上で"Paul Murphy"で検索してみると、
割とよくあるお名前のようで結構引っ掛かりまして、
その中でコーネル大学出身で現在ゲーム会社のCEOをしているという
Paul Murphyなる人物がTwitterにいたのでもしや…と思い、
筆者からコンタクトを取ってみましたが、
この方についてはウィザードリィのPaul Murphy氏とは別人という
ご返答を頂いたことを記しておきます。
ウィザードリィ・狂王の試練場の「マーフィーズゴースト」と言えば、
地下1階のとある個所に固定出現し、
莫大なHPと異常なまでの回避力でLv1の冒険者を撲殺する…と思いきや、
攻撃力がほとんどなく、1匹あたり6人パーティで731ポイントの経験値という
地下1階としては破格の経験値を持つ上に何度でも出現するため、
少しレベルが上がった冒険者からは格好の「道場」として狩られまくる…という、
ワードナに挑む冒険者の方々なら一度はお世話になったであろうモンスターです。
そのインパクトの強さゆえか、
FC版『ウィザードリィ3 ダイアモンドの騎士』では原作で登場しないにもかかわらず、
新規追加モンスターとして、再び地下1階に固定配置。
その後の『ウィザードリィ外伝1〜3』でも序盤の経験値稼ぎモンスターとして実装され、
『ウィザードリィディンギル』では遭遇時にムービーが流れる…など、
日本製のウィザードリィにおいて定番モンスターの地位を確立しました。
このマーフィーズゴーストについては、
実はモデルが製作者の友人…という事はよく知られていますが、
それ以外にも、Web上には以下のような記述が散見されます。
噂によると、アンドリューさんが嫌がらせのつもり(ジョークのつもり)でマーフィーさんをモンスターとして登場させたという逸話があるという。
(RocketNews「開発者が嫌がらせで友人の名をゲームに登場させる」より引用)
嫌がらせというか、イタズラでマーフィーさん(実在)に知らせずにプログラムしておいたモノだった。
このマーフィーさん(実在)は、ロバートさんやアンドリューさんの友達で、ちょっといじめられっ子だった過去を持ついじられキャラ。
(appget「ウィザードリィ」マーフィーズゴーストは実在する!出現場所はトイレ!?ダンジョンRPGの始祖のちょっとヤバい噂に迫る!【ゲーム年代史】 より引用)
この「マーフィーズゴーストはゲームの製作者が嫌がらせで登場させた」という説。
製作者が彼に恨みを持って何度も倒されるモンスターとして登場させた…というのは、
果たして本当でしょうか?
結論から言いますと、
「作者が嫌がらせで登場させた」という事を裏付けるものは何一つありません。
実のところ、マーフィーズゴーストについて、
開発者の一人であるロバート・ウッドヘッド氏はこう答えています。
Q:
Murphy's Ghostには実在のモデルがいるというのは本当ですか?
A:
Murphy's Ghostはアンドリュー・グリーンバーグの友人で、
アンドリューオリジナル版ウィザードリィのプレイテスターの1人だったPaul Murphyからいただいた。
ウィザードリィにはその手のジョークがいっぱい入ってるよ。
(「ウィザードリィコレクション」(1999,鈴木常信著,ローカス), P37より引用)
この通り、「製作者の友人である」という事しか答えておりません。
また、製作者の友人を敵として登場させたのはマーフィーズゴーストに限らず、
例えばシナリオ4『ワードナの逆襲』の共同制作者である
ロー・アダムスがモデルのラスボス「ホークウインド」
(氏は『ウルティマ4』や『バーズテイル』の制作に参加しており、
いずれの作品にも氏がモデルのキャラクター「ホークウインド」が登場する)、
また『リルガミンの遺産』に登場する中ボス「ポ・レ」「デルフ」も、
コーネル大学(原作者2人の出身校)内のゲームサークル
「Wizardry Advanced Research Group」に所属しシナリオの一部を担当した
Samuel Pottle氏、Robert Del Favero氏がモデルとなっています。
("Pottle"から"t"を省略して"PO'LE"、"Del Favero"の先頭4文字を取って"DELF"。
なお「デルフ」については日本のウィザードリィ解説本のいくつかにおいて、
「陶器に悪霊が宿ったもの」という解説がなされているが、
これはオランダに実在する「デルフト陶器」からの連想による後付け)
以上のように、アンドリュー氏・ロバート氏の2人が中心となって
ウィザードリィを制作していた頃は製作者の友人を敵として登場させることは
当たり前のように行われていて、そのあたりに特に悪意は見出せませんし、
何より製作者たちが嫌っている人物を、
自作ゲームのテストプレイヤーとして採用することは普通ないと思うのですが(笑)
「嫌がらせでゲームに登場させた」という可能性は、限りなく低いと思います。
「ウィザードリィは想像力のゲーム」とは昔からよく申されますが、
あらぬ方向に想像力を発揮して根も葉もない噂を広めるのは、
ゲーム自身にも制作に関わった方たちにも失礼だと思うのです。
他にも冒頭で紹介したappgetの記事には、
「ダンジョンの形状が彼らの通っていた大学の間取り」や、
「マーフィーズゴーストの出現位置が大学のトイレの場所」といった記述がありますが、
現在のコーネル大学の地図を目の皿のようにして探しても、
それっぽい箇所は全く見つからないとか、
個室の周りを多数の小部屋が囲ってるトイレなんてどんな構造なんだよ!とか、
とにかくツッコミどころ満載で、
こんなデタラメな記事で「ゲーム年代記」なんて名乗るんじゃねえ!と、
筆者は若干の怒りを持っている事を表明しておきます。
余談:
ネット上で"Paul Murphy"で検索してみると、
割とよくあるお名前のようで結構引っ掛かりまして、
その中でコーネル大学出身で現在ゲーム会社のCEOをしているという
Paul Murphyなる人物がTwitterにいたのでもしや…と思い、
筆者からコンタクトを取ってみましたが、
この方についてはウィザードリィのPaul Murphy氏とは別人という
ご返答を頂いたことを記しておきます。
この記事へのコメント
1. Posted by 次のページはサッキュバス October 30, 2017 15:43
これはたぶんですが、須田PINさんが書いた
「ウィザードリィIII 攻略の手引き」の108ページ、マーフィーズゴーストのデータに
「R.ウッドヘッド、A.グリンバーグ両氏が大学時代に大嫌いだったクラスメートの名前である」
と書かれているのが発端だと思っています。
嫌いだから稼ぎモンスターにして、冒険者に虐殺させている。
攻略本に頼ったファミっ子は、陰湿な設定に衝撃を受けました。
「ウィザードリィIII 攻略の手引き」の108ページ、マーフィーズゴーストのデータに
「R.ウッドヘッド、A.グリンバーグ両氏が大学時代に大嫌いだったクラスメートの名前である」
と書かれているのが発端だと思っています。
嫌いだから稼ぎモンスターにして、冒険者に虐殺させている。
攻略本に頼ったファミっ子は、陰湿な設定に衝撃を受けました。
2. Posted by ずんこ。(jzunkodj4y) October 30, 2017 20:46
自分もどこかの書籍媒体でそういう表記を見た覚えがあったんですが、その本でしたか!
引っ張り出して確認しました(P108)。
須田PIN氏が何を考えて書いたかはわかりませんがなんというか…罪深いなと。
引っ張り出して確認しました(P108)。
須田PIN氏が何を考えて書いたかはわかりませんがなんというか…罪深いなと。